血液検査における貧血の見極め方

理学療法評価
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近年は電子カルテ化が進み,簡単にクライアントの血液検査データが得られるようになりましたね.

理学療法士の学会発表や論文等を見ても,血液検査データを使った研究というのが以前より増えてきているように感じます.今回は貧血について血液検査データを交えながら考えてみたいと思います.

 

臨床データから読み解く理学療法学 [ 安保 雅博 ]

 

目次

 貧血とは? 

貧血というのは,何らかの原因で血中のヘモグロビン濃度,赤血球数,ヘマトクリット値が低下した状態を指します.

一般的には末梢における血中のヘモグロビン濃度が基準値を下回る場合を貧血と定義します.

この基準値ですが,成人男性で13g/dl未満を,成人女性で12g/dl未満を貧血とするのが一般的です.

 

 貧血による症状は? 

貧血になると体中のさまざまな組織が酸素欠乏に陥りますので,この酸素欠乏に対して代償機能が働き,さまざまな症状が出現します.

脳組織の酸素欠乏による症状としては,頭痛やめまい・立ちくらみなどが代表的です.

骨格筋の酸素欠乏による症状としては,全身倦怠感,易疲労感,間欠性跛行などが挙げられます.

また酸素欠乏が続くと,代償機構によって酸素を組織に供給するために心拍出量や心拍数を上げることによって対応しようとします.そのため動悸や頻脈,呼吸数増加による息切れが生じることが多いです.

さらにわれわれ理学療法士が運動療法を行う場合には,運動によって筋骨格系の血流の割合が増加するため,貧血症状を呈している場合には,他臓器の酸素欠乏に注意が必要となります.

貧血を疑って血液検査データを見る場合には,特にヘモグロビン値と赤血球値を確認することが重要となります.

 

ここではヘモグロビンと赤血球値についてご紹介いたします.

 

 ヘモグロビン(Hb)とは? 

ヘモグロビンというのは酸素運搬を行う蛋白質です.ヘモグロビンはHbと表記することが多いですが,医療機関では「ハーベー」と呼称されることが多いです.

ヘモグロビンの基準範囲は年齢によって異なりますが,男性で10.4~16.8g/dl女性で10.1~14.9g/dlとされております.WHOによる貧血の基準値については,成人男性で13g/dl未満成人女性や小児(6~14歳)で12g/dl未満妊婦や幼児(6ヵ月~6歳)で11g/d/l未満と定義されております.

また高齢者の貧血の定義については,男女問わず11g/dl未満と定義するものが多いです.ヘモグロビン値の低下は大きな問題ですが,増加した場合にも問題となり,赤血球増多症と診断されます.

ヘモグロビン値は血漿量の変化にも影響を受けます.

そのためヘモグロビン値を見る際には,脱水による濃縮や,大量輸液や水分過多による希釈などを考慮した上で結果を解釈する必要があります.

また絶対値そのものも重要ですが,経時的変化を追いながら,データが変化した理由を考えることも重要と成ります.

例えば脱水傾向になっていれば,血漿が濃縮されヘモグロビン値が相対的に増加するわけですが,この場合には貧血による脳組織の酸素欠乏症上は出現しませんが,循環血液量の減少に伴う起立性低血圧には注意が必要です.

さらにヘモグロビンは酸素と結合した酸化へモグロビンと結合していない還元ヘモグロビンに分けられます.

われわれ理学療法士が測定することが多い経皮的酸素飽和度(いわゆるSpO2のことです)は血液中のへモグロビンのうち酸化ヘモグロビンの割合を表し,酸化へモグロビン/(酸化ヘモグロビン+還元ヘモグロビン)×100で表されます.

したがって経皮的酸素飽和度はヘモグロビンの絶対数とは関係ないわけです.つまり経皮的酸素飽和度の低下は貧血を表すものではないということです.

貧血というのは酸素を運ぶヘモグロビン(酸化十還元)の絶対数が低下した状態であり,酸素化に問題ない場合には還元ヘモグロビンは0に近い数字をとりやすく経皮的酸素飽和度は100%に近い値となります.

そのため経皮的酸素飽和度が高い値を示していても,ヘモグロビンが低ければ酸素供給量は低下することになります.

SpO2が高値であっても酸素運搬能が低下している可能性があることを知っておくことが重要です.

 

 貧血を有するクライアントに対する運動療法 

健常例では運動療法を行うと,骨格筋や臓器をはじめとする末梢組織の酸素消費量が増加します.

しかしながら,貧血時には末梢組織への酸素供給量は低下しておりますので,酸素供給量が低下した状態で,さらに運動を行うと,骨格筋での酸素消費量が増え,各臓器に分配される酸素供給量がさらに低下してしまいます.

したがって経皮的酸素飽和度の値のみで末梢組織の酸素化を評価することは非常に危険であり,貧血を有するクライアントを対象に運動療法を行う場合には,息切れや目眩,倦怠感など他臓器における低酸素症状に十分に注意する必要があります.

また貧血が重度の場合には輸血も考慮されます.

大腿骨近位部骨折例を対象とした研究によると,貧血は機能的予後の予測因子になるということも報告されており,まずは運動療法実施に耐え得る酸素化能を獲得する必要があるとか寝られます.

したがってわれわれ理学療法士は定期的にクライアントのヘモグロビン値から貧血の状態を確認し,運動強度を調整していく必要があります.

 

 赤血球数 

赤血球数にはヘモグロビンを多量に含み,酸素や二酸化酸素を運搬する役割があります.

基本的な増減についてはヘモグロビンと同じですが,鉄欠乏性貧血の初期はヘモグロビンが低下し,赤血球数は正常であることが多いので,赤血球数単独で解釈すると最も多い鉄欠乏性貧血を見落とす可能性があります.

 

理学療法データブック [ 有馬慶美 ]

 

 

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