コンドロイチンとグルコサミンは変形性膝関節症例における疼痛改善に有効なのか?

変形性膝関節症
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コンドロイチン・グルコサミンは膝OAにおける疼痛改善に有効?

10年くらい前からテレビでもサプリメントのCMは非常に多いですね.

最近は医療広告に関する基準が厳しくなっておりますので,過大広告も少しずつ少なくなっている印象を受けますが,そもそもコンドロイチンやグルコサミンといったサプリメントって効果があるのでしょうか?

われわれ理学療法士も,クライアントからもコンドロイチンやグルコサミンというのは本当に効果があるのかと問われる場面というのは少なくありません.

今回はコンドロイチンとグルコサミンに関して文献的な裏付けも含めて変形性膝関節症例における鎮痛効果について考えてみたいと思います.

 

 

 

 コンドロイチン・グルコサミンとは? 

コンドロイチンとグルコサミンは関節痛に対して服用されることの多い成分です.

コンドロイチンは軟骨・結合組織・粘液に分布するムコ多糖の一種で,骨形成を補助するとされております.

 

グルコサミンは動物の皮膚・軟骨・甲骨類の殻に含まれるアミノ糖で,関節の動きを滑らかにしたり,関節の痛みを改善したりするとされております.

 

両成分を含有する市販薬やサプリメントは多く,理学療法士もクライアントから説明を求められる機会は少なくないわけです.

 

 膝OAを対象としたコンドロイチン・グルコサミンの効果検証 

実はコンドロイチン・グルコサミンの鎮痛効果に関してはきちんと検証がなされております.

有名なのがGlucosamine / chondroitin Arthritis Intervention Trial(GAIT)と呼ばれる研究です.

この研究では変形性膝関節症患者1,583例(平均年齢59歳,うち女性64%)を,①グルコサミン1,500mg/日(500mg/回×1日3回),②コンドロイチン1,200mg/日(400mg/回×1日3回),③グルコサミン+コンドロイチン併用,④セレコキシブ(非ステロイド性消炎・鎮痛薬)200mg/日,⑤プラセボの5群にランダムに割り付け,24週間前向きに調査が行われております.

各群における有害事象や効果の実感がなかったなどの理由により20%前後のクライアントが脱落していますが,最近流行のITT(intention-to-treat)解析にて,脱落群の影響も含めて解析が行われております.

Primary Outcomeは24週時点で膝痛が20%減少したか否かといった基準が用いられております.

 

結果ですが,プラセボ群と比較すると,他の4群はいずれも群痛がやや減少する傾向にありましたが,有意差が出ているのはセレコキシブ群のみでした.

またプラセボ群においてもかなり痛みが減少していることが特徴的で,成分を問わず何らかの製品を服用している方はある程度の効果を実感している可能性が示唆されます.

 

 

 コンドロイチン・グルコサミンの効果に関するSystematic Review 

2015年には,コクランよりコンドロイチンとプラセボまたは他の治療法を比較検討したランダム化比較試験43件を評価したシステマティックレビューが発表されておりますが,このシステマティックレビューに含まれた研究の大部分は変形性膝関節症例を対象としたもので,先に紹介したGAIT試験も含まれております.

 

このシステマティックレビューによると,コンドロイチン800mg/日以上を6ヵ月服用した時点における痛みの程度で有意差が認められており,0~100ポイントの痛みスケールでコンドロイチン群が18ポイント,プラセボ群は28ポイントでしたので,プラセボ群よりもコンドロイチン群で10ポイント疼痛が減少しております.

また膝痛が20%以上改善した症例はコンドロイチン群では100人当たり53人,プラセボ群では100人当たり47人で,その差は6名とわずかであることが明らかにされております.

疼痛のみならず変形性膝関節症そのものへの変化について検討がなされております.

画像診断により2年後の最小関節裂隙幅の減少はコンドロイチン群(0.12mm)がプラセボ群(0.30mm)に比べて0.18mm少なく良好であると結論付けられております.

 

 

 コンドロイチン・グルコサミンの作用機序は? 

変形性関節症に対しては膝関節などにヒアルロン酸(グルコサミンが含まれる)を直接注射すれば一過性の効果は期待できるかもしれません.

これは作用機序も理解しやすいわけですが,一方でサプリメントとして服用するとなるとどうでしょうか?

われわれの体というのは服用した物質がそのまま体中に行き渡るような構造にはなっておりません

一般的にヒトは一日に300~400gのブドウ糖を摂取しますが,サプリメントなどに含まれるグルコサミン含有量は1~2グラムにすぎません.

こんな微量をいくら摂取しても,それが広く体内に輸送され,股関節や膝関節で十分な量のグルコサミンを確保できるのかといったところに大きな疑問が生じます.

ある物質を摂取した後に体内にそれがそのまま反映されるのはビタミン類などのごく一部の成分だけです.

タンパク質・ブドウ糖というのは,消化吸収されたのちに身体全体に必要な各物質に再生成されますので,グルコサミンを大量に摂取したからといって,それがそのまま股関節や膝関節に対して再生成されるとは考えにくいわけです.

このようにコンドロイチンやグルコサミンの作用機序についてははっきりしていないといえるでしょう.

実際にガイドラインでも以下のようにグルコサミン・コンドロイチンの服用に関しては有益性が不明であると結論付けられております.

 

 

 結局のところ効果はあるの? 

以上をまとめますと,グルコサミンやコンドロイチンの摂取による変形性関節症への治療効果は無い,またはあったとしてもかなり限定的でわずかな効果であると言えます.

プラセボ鎮痛とあまり相違ないものと考えられるでしょう.

コンドロイチン・グルコサミンの健康効果を検討した研究では、VASによる疼痛評価が用いられますが,疼痛そのものが主観的な評価ですので,やはりプラセボ効果の影響が多く含まれると考えることができるでしょう.

さらに研究結果を考える上では,Publication bias(出版バイアス)の影響も無視できません.

そもそも論文として公表されているものというのは効果(有意差)が出ているから公表されていることが多く,有意差が出ていないものは論文として公表されにくかったり,アクセプトされにくいといった特徴があります.

こういった面も考えるとますますグルコサミンやコンドロイチンの効果というのは無いと考えることができるでしょう.

ただ私自身はこういったプラセボ効果によって,クライアントの身体活動量が増えたり,クライアントが治療に対して前向きになれるのであれば,われわれ専門職がそれを強く否定することはあってはならないと思います.

 

以前の記事でもご紹介いたしましたが,プラセボ効果を上手に生かすのもわれわれ理学療法士にとって重要な視点だと思います.

 

 

 

 

参考文献

1)Clegg, et al, N Engl J Med, 2006;354:795-808.
2)Scott D, et al., BMJ Clin Evid. 2007;1. pii:1121.
3)Singh JA, et al., Cochrane Database Syst Rev. 2015;1:CD005614.
4)Reginster JY, et al. Ann Rheum Dis. 2017;76:1537-1543.
5)Knudsen JF, et al. Pharmacotherapy. 2008;28:540-548.

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