理学療法士・作業療法士養成における専門学校と大学の違い

臨床実習・国家試験
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皆様もご存じのとおり,理学療法士・作業療法士の教育課程の中には大学教育と専門学校教育が混在しているわけですが,現状では専門学校の養成校が3分の2,大学の養成校が3分の1となっております.

そもそも専門学校と大学って何が違うのでしょうか?今回は大学教育と専門学校教育の相違について考えてみたいと思います.

 

理学療法士になるには

目次

 大学教育と学士力 

前述したように理学療法士・作業療法士の卒前教育には,大学教育と専門学校教育が混在しております.

大学教育では学士の称号を得ることができるわけですが,専門学校教育では専門士(もしくは高度専門士)の称号が得られます.

そもそも学士とは何でしょうか?

何ができるから学士という学位がもらえるのでしょうか?専門士とは実際のところ何が違うのでしょうか?

 

理学療法士・作業療法士の養成の創成期には,3年制の専門学校の教育課程を卒業した理学療法士が主だったわけですが,1990年代後半から理学療法士・作業量ほすい養成課程を設置する大学が増えてきたわけです.

学士力というのは知識・理解,汎用的技能,態度・志向性,総合的な学習経験と創造的思考力から構成されるとされておりますが,果たしてこれらの能力というのは大学教育でなくては得られないものでしょうか?

普通に考えれば専門学校教育でもこれらの能力を養うことは可能なわけです.

大学教育と専門学校教育の大きな相違は卒業研究の有無ではないでしょうか?

当然ながら専門学校教育であっても卒業論文が必須単位となっている養成校もあるわけですが,理学療法士・作業療法士の養成教育において,臨床実習と国家試験が最も重要であり,国家試験勉強に差し支えるから卒業研究は不要だと考える専門学校も少なくないようです.

私自身は大学教育と専門学校教育との相違よりも,3年制教育と4年制教育に大きな相違を感じます.

特に 3 年制の養成課程では時間的に知識を詰め込まざるを得ませんし,1つのテーマについてじっくり考える経験をさせることは難しいと思います.

卒業研究では1つのテーマについて深く学習する経験をできるわけですが,その後の理学療法士・作業療法士としてのキャリアを広げる上で重要になると思います.

 

 

 

 

 

 

 理学療法教育ガイドラインにおける卒業研究 

理学療法教育ガイドライン第 1 版に示されたモデルコア・カリキュラムでは83単位分のカリキュラムが示されているわけですが,4 年制大学の卒業要件は124単位以上ですので,41単位分を必須科目以外の単位に割り当てることができるわけです.

4 年制大学では,この余剰単位の割り当てを英文原著読解や理学療法研究という科目に当てることが推奨されております.4年制の養成校であれば,学術研究教育に時間を避けるわけですが,3年制の養成校においては,このような科目を十分に展開するのは難しいものと考えられます.

前回の記事でも今後の理学療法士・作業療法士養成における必須単位数の増加についてご紹介いたしましたが,ガイドラインの改定によって,今後さらに卒業研究を行う3年制の養成校は少なくなることが予測されます.

さらに4年制の養成校であってもカリキュラムの改訂により,卒業研究を課さない養成校が増えることが予測されます.

 

 

 

 

 

 

 

 学費は? 

学費も気になるところだと思います.

一般的には国公立大学で4年間で200~300万円ほど,私立大学で600~800万円ほど,専門学校(4年制)で400~600万円ほどの学費がかかります.

国公立大学は偏差値も高いわけですが,私立大学と専門学校(4年制)でも4年間で200万円ほど学費に開きがあります.

これをどう考えるかですが,職場によっては大卒と専門学校卒で1万円ほど給与に差があるところもあります(公的なところに多いです).

賞与も含めて年間16万円違うとすれば,13年ほど勤務すれば200万円を穴埋めできる計算になるでしょう.

長い年数勤務するのであれば,職場を選べば大学の学費も元は取り返せるということになります.

しかしながら職場によっては全く差の無いところもありますので,このあたりをどう考えるかですね.

 

 

 大学はつぶしがきく? 

私自身は理学療法士や作業療法士にとって学術研究に取り組むというのは非常に意味のあることだと考えております.

卒後の時間が少ない中で研究を行う上では,学生時代に研究に取り組んだ経験があるかどうかというのは非常に大きいと思います.

 

またもっとも大きい大学と専門学校の差というのは,つぶしがきくかきかないかといったところにあると思います.

大学では理学療法・作業療法分野以外の一般教養についても定められた多くの単位を取得する必要がありますが,専門学校の場合はこの一般教養の単位数が少ないのです.

社会的にも大学卒業というのを就職試験の条件にしているところが多いわけですが,専門学校を卒業しただけでは,一般企業の就職試験さえ受験できない場合が多いわけです.

したがって,養成校に入学した後に,自分が理学療法士・作業療法士に向かないので,他の職業を志そうと考えた場合に,大学であればとりあえず卒業して学士をとってということができるわけですが,専門学校の場合は専門学校を退学する他ないわけです.

 

作業療法士プロフェッショナル・ガイド 作業療法士とは何か (単行本・ムック) / 杉原素子/編集主幹 古川宏/編集主幹

 

 

 

 

今回は専門学校と大学の違いについて考えてみました.

以前にも教育ガイドラインの変更についてご紹介いたしましたが,3年制の養成校は単位数が増えること等を考慮すると,今後は淘汰される可能性も0ではありません.

今後はそういった面も含めて養成校を選択する必要がありそうですね.

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