変形性膝関節症例における膝関節伸展可動域制限の原因を考える

投稿者: | 2018年9月21日

以前の記事でもご紹介いたしましたが,膝関節屈曲拘縮(膝関節伸展可動域制限)というのは変形性膝関節症の進行を助長しますので,変形性膝関節症例の理学療法を考える上では,膝関節屈曲拘縮の改善を図ることが重要となります.膝関節伸展可動域制限の改善を図るためには,膝関節伸展可動域制限の原因を考えることが重要となります.今回は変形性膝関節症例の膝関節伸展可動域制限の原因について考えてみたいと思います.

 

膝関節伸展可動域制限の原因

膝関節伸展運動時には,大腿骨は脛骨上を前方に転がり,最終域付近で後方に滑ることが明らかにされております.したがって膝関節屈曲拘縮の原因になるのは,単純には膝関節屈伸軸の後方に位置する組織であると考えられます.膝関節後方に位置する組織としてはハムストリングス・膝窩筋・腓腹筋などが挙げられます.膝関節伸展可動域制限がある場合には,まずこれらの筋群の短縮を疑う必要があります.

半膜様筋

半膜様筋は半腱様筋を深層から被う扁平な腱で坐骨結節から起始し,大腿中央部から筋腹の厚みを増しながら,半腱様筋の深層を大腿遠位に向かって走行します.半膜様筋の停止部は膝窩部で広く分岐し,安定性にかかわる靱帯などに付着することから,筋の短縮など機能低下が生じると膝関節伸展可動域制限の原因になりやすい筋の1つです.半膜様筋の作用は膝関節の屈曲と下腿の内旋です.超音波画像診断装置による検討では,膝関節伸展に伴って半腱様筋が内側へ移動し,膝関節屈曲に伴って半膜様筋が外側に移動することが確認されております.したがって半腱様筋に対するアプローチを行う場合には,伸張性の改善を図るとともに内側方向への滑走性を獲得する必要があります.

膝窩筋

膝窩筋は大腿骨外側上顎の外側面から起始し,関節腔内を貫いた後,筋腹となり内下方に向かい脛骨後面上部に付着します.膝窩筋は膝関節後外側の静的安定化機構の1つである弓状膝窩靱帯と筋膜を介して結合しており,静的安定化機構の緊張を調節していると考えられます.そのため膝窩筋の筋スパズムや短縮が起これば静的安定化機構の緊張が亢進し,屈曲拘縮の要因になると考えられます.膝窩筋は解剖学の成書によると,膝関節屈曲,下腿の内旋に作用するとされていますが,膝関節に対しては伸展作用を有しているといった報告もあり,屈伸作用に関しては統一した見解は得られていません.一方で下腿内旋作用については見解が一致しておりますので,膝窩筋が下腿外旋を制限する組織であることがわかります.Screw home movementを考えると膝関節伸展時に下腿は外旋しますので,膝窩筋が短縮しているとScrew home movementが生じず,膝関節伸展制限が起こると考えられます.

腓腹筋

腓腹筋は大腿骨内側順から起始する内側頭と大腿骨外側頼から起始する外側頭に分けられます.内側頭は下腿後面を外下方へ,外側頭は下腿後面を内下方へと走りアキレス腱となり踵骨隆起に付着します.内側型の変形性膝関節症ではでは膝関節内反・屈曲に伴い膝関節内後方が短縮するため,特に腓腹筋内側頭の伸張性低下が問題となることが多いです.腓腹筋の作用は膝関節屈曲と足関節底屈です.超音波画像診断装置による検討では,足関節底屈に伴い腓腹筋が下腿後面内側に移動することが確認されており,腓腹筋の伸張性改善と合わせて,下腿後面内側への移動を誘導することが重要となります.

後方関節包

関節包は最深層に位置する組織ですが,内反変形によって関節包内側が,伸展制限により後方が短縮するのが特徴です.そのため変形性膝関節症例においては,後内側関節包は最も伸展制限に関与する関節包であります.人工膝関節全置換術でも後内側関節包の剥離がなされることが少なくありません.膝関節伸展時に膝窩部後内側に疼痛を訴える場合には,筋の伸張性低下と合わせて後方関節包の短縮を疑ってみる必要があります.

極める変形性膝関節症の理学療法 保存的および術後理学療法の評価とそのアプローチ (臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス) [ 斉藤秀之 ]

膝関節伸展可動域制限の原因は後方組織だけではない

しかしながら実際には膝関節屈曲拘縮の原因となる組織は,後方組織だけではありません.例えば屈伸軸の前方に位置する膝蓋下脂肪体や膝蓋骨周囲の靱帯,関節包が短縮すると,最終伸展域での大腿骨の後方への滑りが制限されてしまいます.これによって最終伸展可動域が制限されることもあります.また大腿筋膜張筋や縫工筋といった側方に位置する組織も伸展可動域制限の原因となりますので,後方以外の組織にも目を向けることが重要です.

膝関節伸展可動域制限の原因を特定する

膝関節伸展可動域制限の特定の方法については以前の記事でもご紹介いたしましたが,二関節筋にターゲットを当てて考えることが重要です.

背臥位に比較して股関節屈曲位で膝関節伸展制限が顕著となる場合には,ハムストリングスの短縮が疑われます.また背臥位・股関節屈曲位ともに膝関節伸展制限がある場合には,足関節を背屈させて腓腹筋や足底筋の関与を考えることが重要となります.これらはあくまで後方に疼痛を訴える症例の場合ですが,伸展時に前方や側方に疼痛を訴える症例も少なからず存在しますので,そういった場合には他の組織も含めて考える必要があります.その際に役に立つのが膝蓋骨の可動性から膝関節の伸展可動域制限の原因を特定する方法です.

膝関節疾患に対する理学療法〜変形性膝関節症を中心とした評価と治療〜[理学療法 ME122-S 全2巻]

膝蓋骨の可動性から伸展可動域制限の原因を推定する

膝蓋骨の可動性を評価することで,制限組織を推定することが可能となります.特に膝関節伸展可動域制限を有する場合には膝蓋骨の頭側移動が制限される場合が多いわけですが,こういった場合には膝蓋腱や膝蓋下脂肪体の柔軟性低下が膝関節伸展可動域制限の原因になっている場合もあります.

今回は変形性膝関節症例の膝関節伸展可動域制限の原因について考えてみました.関節可動域を制限する組織としては今回挙げた筋や関節包以外にも皮膚や筋膜といった他の組織の可能性も考えられます.制限因子を考える上ではやはり解剖学的な知識が必須となります.また近年では超音波診断装置によって関節運動時の軟部組織の動態が明らかにされてきておりますので,そういった情報も加味しながら制限因子を考えて,アプローチを行うことが重要だと思います.

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