変形性膝関節症例における疼痛の原因ってどうやって特定してますか?

投稿者: | 2018年9月18日

変形性膝関節症例の疼痛を特定するためには,解剖学的・運動学的な知識が重要となりますが,問診や局所評価に合わせて荷重下でのストレステストを行うと疼痛の原因が明確になります.今回は変形性膝関節症例の疼痛評価のポイントについて解説したいと思います.

①問診

疼痛の評価の基本は問診です.疼痛の部位やその性質,疼痛誘発動作とそのタイミング,経過,疼痛が増強する肢位や軽減する肢位,病歴などを聴取し,疼痛の原因を推察します.特に受診までの経過が重要で,いつ,どのように疼痛を感じ始め,現在はどのような疼痛であるのかを把握することが重要です.

疼痛がの急性増悪している場合には,組織損傷や関節水腫を伴う炎症性疼痛を疑うのが一般的です.一方で慢性的な疼痛の場合には,神経障害性疼痛が疑われますので,大腿神経や第2~4腰髄後根神経の神経絞扼や伸張が疑われます.

②膝関節の局所評価

膝関節周囲の炎症症状(腫張・熱感・発赤・圧痛など)を視診および触診にて確認します.膝蓋跳動などの関節水腫の徴候や熱感が強い場合には,関節内の炎症症状を疑います.関節内圧が上昇しており,滑膜や関節包の疼痛閾値が低下しているため,関節運動や荷重による内圧変化によって疼痛が出現しやすい状態です.そのため関節外組織である膝関節周囲筋の筋緊張が亢進し,gardingに伴う疼痛が起こりやすい状況でもあります.

圧痛部位に関しては,関節周囲の軟部組織で疼痛を知覚しやすい膝蓋上嚢,関節包,内・外側膝蓋支帯,膝蓋下脂肪体を中心に確認するとよいでしょう.疼痛に加えて左右で比較するなどし,その硬度を確認しておきます.特に膝蓋上嚢膝蓋下脂肪体は神経支配が豊富なので疼痛の原因になりやすいので注意が必要です.

筋については,篶足を構成する筋や筋付着部,大腿外側支持機構である外側広筋や腸脛靱帯(大腿筋膜張筋)に疼痛が出現しやすいといった特徴があります.内側型の変形性膝関節症例では内反アライメントにより大腿筋膜張筋の受動要素によって支持性を高めていることが多く,大腿筋膜張筋が過活動となるため大腿筋膜張筋由来の疼痛が出現しやすいといった特徴があります.さらに内側型変形性膝関節症例では,大腿骨が脛骨に対して内側へ偏位していることが多く,鵞足部に機械的ストレスが加わり,疼痛が生じやすいといった特徴もあります.さらに膝関節の屈曲拘縮のある場合には,膝関節後面筋である腓腹筋・膝窩筋などの筋緊張が高まりやすいので必ず確認しておきましょう.

変形性膝関節症における疼痛を考える上では,膝蓋大腿関節の評価も重要です.臨床上,膝蓋骨周囲や膝蓋骨の関節面の疼痛を訴えるケースは少なくない.膝蓋骨には大腿四頭筋筋力の膝伸展成分を下腿骨に効率良く伝え,大腿脛骨関節の圧縮負荷を軽減する作用がある.加齢に伴う姿勢変化によって身体重心位置が後方化すると,膝関節伸展筋群の膝関節伸展モーメントが過大となり,膝蓋大腿関節への圧縮ストレスが増大し関節面の変性をきたしてしまいます.そのため,膝前面の疼痛を訴える場合には,膝蓋大腿関節由来,または膝蓋上嚢や膝蓋窩脂肪体の疼痛であるかを鑑別する必要があります.

理学療法(第32巻第12号(2015年1) 特集:変形性膝関節症の理学療法

③荷重下でのストレステスト

膝関節は荷重関節ですので,荷重下での評価も重要となります.荷重下では足底の接地状況や身体重心の位置によって膝関節へ加わる機械的ストレスも変化します(上行性運動連鎖).また頭部・体幹・骨盤帯のアライメントによっても膝関節へ加わる機械的ストレスが変化します(下行性運動連鎖).したがって荷重下で疼痛が増強する場合には,上行性・下行性運動連鎖の視点で膝関節へ加わる機械的ストレスを推測する必要があります.疼痛の原因を特定するためには,姿勢を変化させることで疼痛が軽減もしくは増強するのかを確認する作業が非常に重要となります.

片脚立位

荷重下でのストレステストを行う場合には,片脚立位が有用です.片脚立位の際に疼痛を回避するために体幹を側屈させたリ,骨盤を傾斜させ疼痛を回避しているような場合には,代償的に姿勢を制御していると考えられ,特に内反モーメントの増大が膝関節痛の原因になっている可能性が高いです.また体幹・骨盤だけでなく,合わせて足部のアライメントを評価しておくことも重要です.足部を回内して疼痛を回避しているような場合には,同様に内反モーメントの増大が膝関節痛の原因になっている可能性が高いです.

スクワット動作

肩幅程度に開脚した自然立位から着座するような動作を確認します.スクワット動作が難しい場合には起立動作を観察し疼痛の有無やそのタイミングなどを確認するとよいでしょう.高齢者に多い胸椎後響・骨盤後傾姿勢は,膝関節が屈曲位となりやすいため,身体重心が後方偏位しやすく,矢状面上で膝関節の後方に重心線が通ることとなり,膝関節伸展モーメントが増大してしまいますそのため膝関節伸展筋群の過活動や,膝蓋大腿関節の圧縮および摩擦負荷が増大するため,膝前面の疼痛を引き起こしやすいといった特徴があります.

段差昇降動作

段差昇降動作は日常生活で行われる動作であり,屈曲・伸展運動を片脚で支持しつつ遂行する動作であるため,非常に多くの情報を得ることができます.昇段では支持脚の膝伸展相のアライメントや支持性を,また先行脚の接地からの膝屈曲相での支持性や筋力を観察することができます.降段では,支持脚の屈曲運動および制動機能,またそのときの全身アライメントを観察することができます.段差昇降動作では膝関節内圧が上昇するため,膝関節構成体への負荷が強くなり,疼痛が出現しやすい特徴があります

ランジ動作

患側を前方に1歩踏み出した肢位より片脚での屈伸運動を行う.足位と膝関節の屈伸運動方向を同様にした肢位(中間位),.足位を内転位とし膝屈伸運動方向を前方やや外側方向にした肢位(knee-out/toe-in位), 足位を外転位とし膝屈伸運動方向を前方やや内側方向にした肢位(knee-in/toe-out位)の3肢位に分けて動作を観察することが重要です.下腿骨と大腿骨の位置関係を意図的に変化させ,屈伸運動を行うことで膝関節の瘻痛を誘発および軽減する肢位を評価できます.前述した局所の疼痛評価で得られた疼痛増悪肢位や運動方向を想定したうえで,各肢位で膝関節にどのようなメカニカルストレスが加わっているかを推察してから実施することが重要です.

極める変形性膝関節症の理学療法 保存的および術後理学療法の評価とそのアプローチ (臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス) [ 斉藤秀之 ]

今回は変形性膝関節症例の疼痛評価のポイントについて解説いたしました.変形性膝関節症例の疼痛の原因を明らかにするためには,問診・触診・荷重下ストレステストをうまく組み合わせることが重要です.

参考文献
1)Dye SF: Conscious neurosensory mapping of the internal structures of the human knee without intraarticular anesthesia,Am J Sports Med,1998

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です