股関節伸展可動域の測定法~腹臥位とれないんですけど~

理学療法評価
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今回は関節可動域測定に関してご紹介させていただきます.股関節の伸展可動域は測定する機会の多い関節可動域の一つだと思います.股関節伸展可動域測定の大きな問題は,測定姿勢が腹臥位姿勢だということです.高齢者は腹臥位姿勢をとることが困難な場合が多いので,そのために股関節伸展可動域測定を別法で行う必要があることも少なくありません.今回の記事では,そんな際に役立つ股関節伸展可動域測定の方法についてご紹介させていただきます.

目次

なぜ腹臥位が難しいのか?

なぜ腹臥位姿勢をとることが難しいのかという話ですが,無理に腹臥位姿勢をとることも可能な方もおられますが,術後の疼痛の強い時期にわざわざ腹臥位姿勢をとるのは対象者に大きな負担だというのが一番ではないでしょうか.結局のところ世の中というのは得られるメリットとデメリットを天秤にかけて何かを選択することの繰り返しだと思いますが,腹臥位姿勢で股関節伸展可動域を測定するメリットと腹臥位姿勢をとることによる苦痛・不快感といったデメリットを比較した際に,デメリットがメリットを上回ってしまうことが多いと思います.また脊椎に屈曲変形を有する症例では腹臥位姿勢そのものが難しいですし,呼吸循環器系に合併症を有する症例の場合には,腹臥位姿勢をとることによるさまざまなリスクが懸念されます.

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側臥位で測定しよう

腹臥位での測定が難しい場合に有用なのは側臥位姿勢による股関節伸展可動域の測定です.

側臥位姿勢は腹臥位姿勢に比較して対象者への負担も小さく,特に下肢の手術後症例においては非術側を下にした側臥位をとることが可能なので,伸展可動域測定の際にはこの姿勢で測定すると良いです.でも気になるのは基本軸と移動軸だと思います.通常の腹臥位姿勢での測定では,基本軸を「体幹と平行な線(肩峰と大転子を結ぶ線)」,移動軸を大腿骨とすることが多いと思います.側臥位姿勢の場合には,基本軸を「上前腸骨棘と上後腸骨棘を結ぶ直線への垂線」,移動軸を大腿骨とすると測定が可能です.側臥位姿勢の場合には腹臥位に比べて骨盤の固定性が低いので,骨盤の回旋や,前傾運動による代償には注意が必要です.

代償を防ぐために非常に重要なのは対側股関節をしっかりと屈曲させることです.こうすると骨盤が安定しますので骨盤の回旋による代償を防止できるとともに,骨盤前傾運動による代償運動も抑えることができます.

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背臥位でも測定できるの?

結論から申しますと背臥位での測定は不可能です.ただある方法を用いると股関節伸展可動域が0°以上は保たれているかを簡単に確認することができます.そうです,Thomas testです.対側の股関節を最大屈曲させ,検査側の下肢が挙上することが無ければ最低限0°の伸展可動域は保たれていると考えても良いでしょう.術後にスクリーニング的に可動域の確認をする場合には,実は背臥位でのThomas testによる可動域の確認で十分だったりします.この方法も対象者への負担が非常に少ないので有用です.

今回は股関節伸展可動域測定の方法についてご紹介いたしました.腹臥位姿勢というのは骨盤をしっかりと固定できるという面で非常に有用なわけですので,腹臥位姿勢が取れる方は腹臥位姿勢で可動域測定を行うことをお勧めします.腹臥位がどうしても難しいといった場合には今回ご紹介した方法での測定を考えてみてください.

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