変形性股関節症例に対する理学療法と人工股関節全置換術例に対する理学療法は全く違う

投稿者: | 2018年8月3日

前回は人工股関節全置換術を施行するタイミングについてご紹介いたしました.

今回は変形性股関節症例に理学療法を実施する場合と,人工股関節全置換術例に理学療法を施行する場合に根本的な考え方の違いについて考えてみたいと思います.

 

 変形性股関節症例に対する理学療法 

変形性股関節症例に対する理学療法の中で,第1に考える必要があるのは「変形性股関節症の進行をいかに予防するか」といった点です.

変形性股関節症例における歩行の特徴の中でもご紹介いたしましたが,変形性股関節症を予防する上では股関節内転モーメントを軽減させることが重要となります.

また矢状面上の特徴を考えると,股関節伸展モーメントを軽減させることが重要となります.

股関節伸展・内転モーメントを軽減させるためには,Duchenne徴候や逆Trendelenburg徴候といった代償運動についてもある程度は許容する必要があります.

こういった代償運動をある程度許容しながら変形性股関節症の進行予防に資するべく介入を行う必要があります.

また関節症の進行予防に主眼を置いた理学療法を行っていくと同時に,関節可動域・筋力等の機能維持を図っていくことも重要となります.

 

 

 

 

 

 

 

 人工股関節全置換術例に対する理学療法 

人工股関節全置換術後には疼痛・可動域・筋力にはある程度の改善が得られます.

しかしながら疼痛・可動域・筋力といった股関節機能に改善が得られたにもかかわらず,術前からの代償的な動作パターンには改善が得られない場合が多いのです.

術前には股関節伸展・内転モーメントを軽減させるために,代償的な動作パターンを許容せざるを得ない部分もあるわけです.

しかしながら人工股関節全置換術後にはDuchenne徴候や逆Trendelenburg徴候といった代償運動は,インプラントへの局所的な力学的負荷を増加させる上に,腰椎や膝関節といった隣接関節の疼痛とも関連しますので,より早期にこの代償パターンを軽減させることが重要です.

 

 

術前後における矢状面上の変形性股関節症例の歩行について考えてみます.

術前は右の図のように股関節伸展モーメントを軽減させるために,足関節を底屈させて代償的な歩行パターンを呈しているわけですが,これを修正してしまいますと股関節の伸展モーメントが過大となり変形性股関節症の進行を助長してしまう可能性があります.

一方で術後はこういった代償を可能な限り減じて,股関節伸展角度を拡大していく必要があるのです.

つまり術前と術後では同じ歩容であってもアプローチが全く異なるということになります.

 

 

 

雑誌や書籍の中で,「変形性股関節症・人工股関節全置換術に対する理学療法」といった形式で,変形性股関節症例に対する理学療法と人工股関節全置換術例に対する理学療法を一括りにして扱っているものがありますが,根本的には全く異なった戦略が必要になりますので注意が必要です.

 

 

 

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