変形性股関節症例における筋力低下の特徴~なぜ外転筋力が弱い?インナーマッスルがなぜ重要なのか?~

投稿者: | 2018年7月17日

前回の記事では変形性股関節症例における関節可動域制限の特徴についてご紹介いたしました.

今回は関節可動域と同様に臨床実習でも評価やアセスメントを求められることが多い筋力低下について考えてみたいと思います.

 

 

 

 変形性股関節症例における股関節外転筋力低下 

変形性股関節症の筋力と言えば多くの理学療法士が股関節外転筋力である中殿筋の機能低下による外転筋力低下を想像されると思います.

変形性股関節症例においては大腿骨頭の外上方偏位や圧潰に伴い中殿筋が短縮位となり,中殿筋の静止張力が低下することが,股関節外転筋力低下の最も大きな原因であると考えられます.

特にこういった場合に特徴的なのは股関節外転位での筋出力の低下が著しい点です.

例として変形性股関節症に対して人工股関節全置換術が施行されると,術後数日しか経過していないにも関わらず,術前よりも股関節外転筋力が強くなるといった症例を経験することは少なくありません.

これは術後数日で中殿筋の筋肥大が起こったとか,神経筋単位での機能が改善されたとかいう話ではなく,骨頭が解剖学的肢位まで整復されたことで,中殿筋の静止張力が増加したためと考えるのが普通だと思います.

ですので変形性股関節症例の股関節外転筋力の評価を行う際には大腿骨頭の亜脱臼や圧潰を評価した上で,中殿筋がどの程度短縮位を強いられているかといった評価を行うことが重要です.

 

また静止張力の低下による筋力低下だけではなく,変形性股関節症例の中殿筋には質的な変化が起こっていることも明らかにされております.

筋が委縮しているといった量的な要因だけではなく,実は筋線維Typeにも変化が起こっているのです.

変形性股関節症例においてはTypeⅡ線維を支配する運動単位の動員数と発火頻度が減少しており,速筋線維の遅筋化が起こっていることが明らかにされております.

歩行の立脚期などの瞬間的に外転筋力の発揮が必要な場面で中殿筋が機能しないとどうなるかというと,Trendelenburg sing等の跛行が出現してしまうことになります.

MMT(Manual Muscle test)で股関節外転筋力がGood levelにも関わらずこういった跛行が出現する例は中殿筋の質的変化を疑ってみる必要があるかもしれませんね.

 

 

 

 

 インナーマッスルの重要性 

股関節外転筋力と合わせて着目しておきたいのが,股関節の安定性に寄与するインナーマッスルです.

股関節は前方の安定性を腸腰筋が,側方の安定性を小殿筋が,後方の安定性を深層外旋六筋が担っておりますので,これらの機能を評価しておくことが非常に重要となります.

 

股関節のインナーマッスルを考える前に,単関節筋(インナーマッスル)と二関節筋(アウターマッスル)の働きの違いについて考えておきたいと思います.

ご存知の方も多いと思いますが,単関節筋(インナーマッスル)の役割は関節の固定と運動方向の誘導です.単関節筋(インナーマッスル)は発揮筋力は小さく関節モーメントも小さいのですが,深層に位置しておりますので関節を安定させる機能を果たすことができるわけです.

一方で二関節筋(アウターマッスル)は浅層に位置している筋が多く,発揮筋力・発揮モーメントともに大きいのが特徴です.

一般的には単関節筋(インナーマッスル)は姿勢を保持する際に働く筋が多く赤筋線維が多いのに対して,二関節筋(アウターマッスル)は瞬間的な筋力発揮を要求されるため薄筋遷移が多いのが特徴です.

 

単関節筋(インナーマッスル)と二関節筋(アウターマッスル)の関係は,肩関節で考えると非常にわかりやすいです.

肩甲上腕関節には棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋といったRotator Cuffと呼ばれるインナーマッスルがありますが,これらの筋群には関節を安定させる働きがあります.

一方でアウターマッスルである三角筋は上腕骨を挙上させるためにおおきな力を発揮します.

Rotator Cuffの機能が低下してもアウターマッスルとしての三角筋の機能が低下しても上肢を挙上することが困難となります.

 

 

 

股関節においても同じです.

大殿筋や中殿筋が効率よく筋力を発揮するためには,腸腰筋・小殿筋・深層外旋六筋といったインナーマッスルの働きが重要となります.

残念ながらこれら腸腰筋・小殿筋・深層外旋六筋の機能評価については,信頼性・妥当性の高い方法論が確立されていないのが現状です.私自身がどういった評価を行っているかといったところを簡単に紹介いたします.

 

 

 

 腸腰筋 

通常のMMTでは大腿直筋の代償によってもMMT Normal levelということも少なくありません.

大腿直筋と分別して評価を行うのであれば,大腿直筋が短縮位となる深屈曲位で股関節をどの程度自動屈曲できるかを確認すると良いでしょう.

 

 

 

 

 小殿筋 

中殿筋や大腿筋膜張筋は股関節内転位から中間位での活動性が大きくなることが知られております.

一方で外転位では中殿筋や大腿筋膜張筋の発揮張力が減少しますので,股関節外転位での外転筋群の筋出力を評価すれば小殿筋の機能を評価することが可能です.

 

 

 

 

 深層外旋六筋 

深層外旋六筋の機能評価を目的に徒手抵抗を加える場合には抵抗の大きさに注意が必要です.

抵抗が大きいとアウターマッスルが代償的に収縮しやすくなってしまいます.

股関節膝関節を屈曲させた臥位姿勢で膝に向けて股関節回旋方向に軽い抵抗を加えることで深層外旋六筋の機能を評価できます.

 

 

今回は変形性股関節症例における筋力低下についてご紹介いたしました.

股関節外転筋力とインナーマッスルを中心に筋力低下を考えましたが,症例によってはこの他の筋群の筋力低下がキーポイントになっている場合もありますので,広い視野で評価を行っていくことが重要でしょう.

 

 

参考文献

1)Kumagai M, et al: Functional evaluation o fhip abductor muscles with use of magnetic resonance imaging. JOrthopRes15: 888-893, 1997

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